「なんだ、こういうときは、あれか? よいお年を…ぐらい言うのか? いや、寒いな」
迷った末、匡は自分でも素直じゃないと思いつつ言った。
「とっとと帰れよ」
結局最後まで微増だにしなかった白井に一抹の寂しさを抱きつつ背後を通り過ぎようとして、いきなり後ろからジャージの襟を掴まれた。
そのまま手加減なしに引っ張られる。
思わずよろめいたところへすかさず白井が回りこみ、匡の胸倉を鷲づかみにした。
「白井、てめぇ」
瞳孔を開ききった双眸には狂気じみた焔が揺らぎ、掴まれているだけでない圧迫を喉に感じた。
「慣れない同情なんかやめろ。おまえに慰められるくらいなら死んだほうがマシだ」
「誰が同情なんかした。慰めたんだ。俺はよっぽどのことでもない限り他人に情けなんてかけねぇよ。離せ」
「俺をバカにしてるんだろ」
「なんで俺がおまえをバカにするんだよ。バカにしてるのはおまえだろ」

