まだあなたが好きみたい



外は満天の星空だった。

空気が冷たく、耳が痛い。


大晦日だからか、日が落ちてしまうと車の往来も乏しく、その代わり、家々に灯る家庭の照明がいつもより多く見受けられる。

年の瀬の慌ただしさから解放されて、あとは除夜の鐘を待つばかりということだろう。


静かなる夜。


……平和すぎる。


思わず吐息が洩れるほど。


いや悪くはない。悪くはないが、つまらなさがあまりに勝って、嫌気がする。


去年は受験生でありながら、ほとんど関係のなかった匡は女子を含む悪友仲間とカウントダウンのためにセンタービルで年を越し、帰ってきたのは朝の4時。


それから9時にふたたび集合して初詣に行って、騒いで、二日三日は彼女の両親が熱海に行くというので彼女の家でしっぽり楽しんだ。


ゆっくり家族と過ごすとか、一人の時間を有意義に使うとか、そういうことが平気でできる感覚が、匡にはなかった。


なんというか、そういうのがすごく、ダサいというふうに思えるからだ。


実際、今、そうなりそうな予感にすこしずつ恐怖を感じ始めているところだ。


予定がなければ必然的に家族と正月を過ごすことになるだろう。


仲良くおせちをつつき、雑煮を食って、初詣に連れ出され、断らなければさらに親戚めぐりに付き合わされるんだ。


寒気がした。


冗談じゃない。