「どういうつもりよ! またぶたれたいの! この変態!」
「へっ、変態!? て、てめぇ誰に向かって言ってんだ! しかもそんな大声で! 訴えるぞ!」
「はっ! やれるもんならやってみなさいよ。これっぽっちも負ける気がしないわ!」
そうして二人は懲りもせずまたしても剥き出しの怒りをぶつけてにらみ合う。
ここまでくるとお互いバカとしか言いようがないが、得体の知れない恐怖に怯えさせられた後で艶っぽい雰囲気になれというほうが無理だ。
ましてや相手がこれでは。
窪川は憮然とそっぽを向き、息を整えるようにひときわ大きく息を吐いた。
居心地悪そうに髪をかきあげると、逡巡するように眉根を寄せ、やがて彼にはめずらしく弱弱しい声でこう言った。

