そうなのだろうか。


ちがう、わたしは復讐がしたかった。


あいつことなんか、嫌いだ。


だからとことん追い詰めて、泣かせて、跪かせて、わたしにしたことを心の底から後悔すればいい。


そう思う心に偽りはない。


でも一方で、そこにはちゃんと好きの気持ちもあるのだから我ながら恐ろしい。


しかし、そう、そんなのはちがう。


嫌いと、好きは、両立しない。


両方とうまく付き合うことなんてできっこない。


もう身に沁みてわかっている。


有正も――本心では窪川を選ばないで欲しいと思っているにちがいないが、かくなる上はそうでもいいから、とにかくどちらかひとつに絞って邁進して欲しいと願っている。


じゃないとそのうちわたしがどうにかなってしまうから。


つぶさに見ていた有正だから知っている。


窪川をぶってからの一週間、菜々子はほとんど抜け殻のように茫然自失で、ともすれば自分がどこにいるのかさえわからなくなっていた。


だからこそ、もう見ていられないと、僕が一肌脱がなきゃと、そうかき立てられたのにちがいない。



電車がホームに滑り込む。


強い夕映えに呼応して、菜々子の心までがゆるやかに日暮れていく。


今日もまた、これという答えが見つからなかった。