鬱陶しげに言いながらようやく東が足を止めたのは、菜々子が高校に上がってから通るようになった道沿いにある割合広めの公園だった。


その中央、街灯の光が届くところで、やっとまともに目を合わせた。



少ない遊具と飾りのような小洒落たベンチ。敷地を囲むように植えられた木で、外からの視線はある程度さえぎられる。もっともこの時間、このあたりを歩く人の数なんてたかが知れているのだが。




すっかり日は落ちて、敷地の中に一本しかない街灯の明かりが頼りなげに足元を照らしている。


今日は月も大きく削れて、空まで暗い。




まるで、東に幻滅した自分の心みたいだ、と菜々子は切なくおもった。




いい人だと信じていた。


変な意味ではなく、彼はわたしにとって特別な人だった。



……まだそうと知れたわけではない。しかしそれでも、一度芽生えてしまった疑惑は深く菜々子の心に根を下ろし、もし次どこかであったとき、これまでと同じように接せる自信はない。




眼鏡の眼差しが、まだ目の裏に残っている。






「痛むのかよ」




「……は?」





間の抜けた返事に間髪をいれず舌打ちが飛んだ。






「痛いかって聞いてんだよ!」





それ、と窪川は菜々子の手元を指差した。さも、なんて物分りが悪いんだとでも言いたげな、ぶっきらぼうすぎる所作で。