妙にするどい視線が菜々子の額目がけて飛んできた。 ぎくりとして、菜々子は首をすくめつつ、そっと目線だけを上げてみる。 東の連れの眼鏡男とドアのガラス越しに目が合った。 まさか、ばれた? 菜々子はあわてて目を床に落とした。 しかしまだ、視線を感じる。 菜々子は徹底して下を向き、もし眼鏡が誤解をしているのだとしたら彼らを見ていた事実が、あの一瞬のたんなる偶然だと認識を変えてもらえるよう、体を硬くして祈った。 「あの子――だよな」 そのとき、ふいに眼鏡の声がした。