まだあなたが好きみたい





「ならよかった。しかし窪川みたいな天才でもスランプとか人並みに足踏みをすることもあるんだな」



「それは、あるだろ。もっとも俺の場合、天才じゃないからだろうけど」



「そうかな」



「そうだろ。むしろ、才能がありすぎて困るっつーのが天才にはつきものだろ」



「あー俺もそんなこと言ってみてー! 早く上手くなりてーなーバスケー」



「そんな好きなのか、バスケ?」



「好き。でも中学は、部活動の花形のわりに真面目にバスケしようと思ってるやつ自体いなかったし、ていうか伝統的に不良の幽霊部員歓迎みたいな、もっぱらそういう連中の受け入れ先だったんだよね」



「マジ? それって普通、文化部じゃねーのかよ」



「俺んとこはバスケだったんだよ。でも、女子はちゃんとやってたよ。体育館の非常口からときどき見える景色がうらやましかったなー」





バスケ、野球、サッカーと言えば三大巨頭とも言われるほどに人気の部活動だ。


そのひとつが体のいい不良の掃き溜めになっているなんてバスケの冒涜で、俺まで侮辱されている気分になる。




それではバスケがしたくてたまらない人間がいたとしても改善の手立てなど立てようがない。そう思うと気の毒でならなかった。




だからなおさら夏原の剛直さには感心する。



一度はあきらめたバスケをこの強豪校で叶えようとする彼の心意気が匡の胸を熱くした。






「だから俺が知ってるバスケの技とかルールってあくまで授業で習うくらいで、昨日も監督に注意されたっばかりだけど、なんとしても引退なるまでに一回は公式戦にでるのが俺の目標なの」



「叶うだろ。いや、お世辞でも冗談でもなくな」



「そうかな。どうだろ。自分のことはよくわかんないよ俺も。とくにバスケのことは、なにしろ一年目だし」