「そうじゃなくて、だから」



「それとも実はもう好きな子がいるとか!」





彼女は瞠目した。


匡はぎょっとして身を引いた。



図星だったからではない。



一瞬、マジで眼球が落ちてくるんじゃないかと怯んだのだ。




どうやらちゃんとはまっているようだと確認すると、匡はつくづくと思った。






もう、こいつ、だめだな。







匡は舌打ちをするように吐き捨てた。





「そういう、ライバルみたいな対象がいないと割り切れないんすか? 俺が今どういう気持ちで、何を考えてるとか、そういうことは一切おかまいなしっすか」





匡の言葉が理解できないみたいに、女は無垢な瞳を向け、首を傾げる。






「だって、別れたんでしょ?」







俺は一瞬、声を失った。





ああこいつ、ほんとにばかなんだなあ、といっそ感心し、じゃあもういっか、と吹っ切れた。






「は。まあ? 俺は確かに今一人で、あいにく元カノに未練もないし、好きなやつもいないす。だけど、だからって誰かと付き合おうって気にもならねぇ。あんたはそれがわからないみたいだけど、俺、あんたと付き合うほどあんたを知らないし、付き合ってみてから知りたいと思わせるほどの魅力も面白みもぶっちゃけない。だから付き合わない。そこまで言わないとわかんねっすか? わかんねっすね。だってそういう目ぇしてますもんね」