「すんません」
匡は素直にそう言って頭を下げた。
「どうして?」
どうしてって。
食い下がるというより、率直に不思議だという様子で先輩は俺を見上げる。
顔に比して目ばかりがでかく、なんとなくカエルを連想させるから本当はあまり長居をしていたくない。
「昨日、彼女と別れたんでしょ? だったらフリーってことじゃん」
「いや、フリーになったからって、別にさっさと次って気分では」
「彼女いたほうがたのしーじゃん」
………。
だから、じゃん、じゃねー。
いらいらする。
「感傷に浸ってるとかもったいないじゃん。てか、匡の柄じゃなくね? あたしと付き合うとたのしーよー」
柄って、お前が決めることかよ。しかもなんでか呼び捨てだし。
匡は無意識のうちに深く息を吸い込んだ。冷たい空気が取り入れることで理性が効いてくる。
「とにかく、俺はあんたとは――」
「それとも、まだやっぱり元カノが忘れられないとか?」
話を聞けよ。

