「裕也の愛のムチは痛いな~」
「うるさい。…それより恋人同士の役って事は『あるぜ。まりあちゃんとのキスシーン』」
「………」
フフン…と鼻で笑いながら裕也さんを覗き込む、敦さん。
そんな二人を見ながら、私は軽く溜息一つついた。
この二人は会うたび毎回のように、私を間に挟んで言い争う。
最初の頃はそんな二人にオロオロしていた私も、大分時間がたつにつれて分かってきた事がある。
兄弟喧嘩は犬も食わない…、と言う事。
だから近頃の私は二人の言い争いが始まると、シラーッとそれを傍観していたりする。
…って言うか、口が挟めない状態で私はとても寂しく思っていたりするのだ。
やはりこの二人は、前世で兄弟なだけあって仲が良くて羨ましい---
「…りあ?…まりあ?」
「んっ?」
いけない。
裕也さんに呼ばれていたみたい。
気持ちを切り替えて、裕也さんにニコリと微笑みかけた。