放課後。課題の提出を忘れ、居残りを命じられた麻友にことわって私は先に帰る事にした。階段を足早におりる。

靴箱にたどり着いた時、ちょうど靴を履き替えていた鈴原水樹と目が合った。

「...あ...」

鈴原水樹は上履きを靴箱になおし、私を見た。

「今も見えてる?」

「え...」

「俺のトーン」

そうだ、トーンとやらが何なのか聞かなくちゃ。さっきはタイミングが悪かった。私は口を開いた。

「トーンって何?」

「声の色だよ。見えてるんだろ?」

私は鈴原水樹の背後を見た。見える。透き通った青い声の色。私は頷いた。