溶ける温度 - Rebirth -


この人、相当、策士なんじゃないの。
照れまくって防戦一方の私に比べて、大志さんはヨーロッパ帰りだからか、しれっと照れた様子もなさそうである。

そして彼は頬杖をついていた手をおろし、机の上においていた私の手に重ねた。
飲食店勤務なのでネイルもやめ、20代半ばの女の人にしてはシンプルすぎる私の手に。

気持ちを流し込むように、私の心をとらえるように、軽くなぜられ握られたその熱さを感じて。
私は初めて、この人の本性を見た気がした。


「残念だけど」


手を握られ、少し身体の緊張を抜いた瞬間。
ぐい、と引かれてその引力のままに体ごとテーブル越しの大志さんの方に傾く。