カシューナッツを一つ口に入れるとほのかな甘みが広がる。真さんは取り扱う食材にかなりのこだわりを持っているので、おそらくこのナッツ一粒一粒も専門店で買いそろえているんだろう。相変わらずのセンスに舌を巻いた。
「真さん、あのあたりで食材そろえてるの?輸入品を取り扱うショップが何軒かあったけれど」
「まぁな。ここから少し遠いが、気に入った食材を使いたいから」
「へぇ。真さんらしいね」
「そういうお前も、なんであの通りに?普通に考えたら、今日は仕事だろ?有給?」
自分の分の珈琲を入れ終わり、私がついた席の真正面に椅子を引くと、そこに腰かけた。
ほのかな珈琲独特の香りが広がる。真さんがいつもお気に入りで飲んでいるグアテマラ産の香りが強いものだ。
