「…あんまりためこまないようにな」 「真さん今日は一段と優しいね。何かいいことでもあったの?」 「うっせーよ。…ほら、行くぞ」 車とお店の鍵を持つと、真さんはいつも通り地下駐車場へ向かう。 こうして私が最後のお客で一人のときは、必ず自宅まで送り届けてくれるのだ。 ごちそうさまでしたという暇もなく彼は先を行ってしまう。 私はあわててキッチンでグラスを洗うと、駆け足で店内を飛び出したのだった。