いつの間にか包丁が奏でるリズミカルな音は、やんでいた。 「軽率な行動したことは謝る。どんな言い訳をしたって、従業員に手を出す店主なんて最低だったよな。昨日のことは噛み癖のある犬に絡まれたとでも思って、水に流してくれねぇか」 背中越しに真さんの謝罪が聞こえた。重くなく、軽い調子をまといながら。 私はすぐに分かった。真さんは選んでくれたんだ。一番、私に負担がかからない今後を。店長と従業員に戻れる選択肢を。 私はどんな顔をして真さんに振り返ればいいか分からなかったから振り返られずにいた。