「…それって。………ううん、ごめん、…なんでもない」 いつもなら。「世間知らずな子どもを嗜めるとか、そういう意味?」って冗談めかして笑いながら返すだろう。 でも昨日の美弥の言葉がよみがえる。真さんの気持ちを勝手に昇華しちゃだめなんだ。 意識はがぜん真さんに集中しているけれど、いつも通りを装うために私は白いチョークに力を込める。 一文字目の書き出しに力みが出たのか、チョークのかけらが割れて地面に落ちた。 「なかったことに、してほしい」