その時、病室の扉がゆっくりと開いた。私は恐怖心から、全身が凍り付いた様に硬直した。
身構えて扉の方向を凝視したが、入ってきたのは看護師長だった。
「気が付いたんですね」
そう言って私の側まで歩いて来ると、その場で深々と頭を下げた。
「この度は当院の看護師が大変な事をしてしまい、申し訳ございませんでした。
警察には連絡し、あなたの身辺は密かに警備する事になりましたので、松山の事はどうか内密にお願いします」
いつも患者に対し尊大な対応をする看護師長が、私に対し改まって謝罪をした。
看護師長が私に危害を加えた訳ではないし、警備までしてくれるというのであれば、事を荒立てる必要も感じられなかった。
それに、私はどこの誰かも分からないし、いつまでここで御世話になるかも分からない。この状況で出来る返事など、1つしかなかった。
「分かりました」
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