翌日――
私は点滴の管と全ての計器類を外され、病院中のあらゆる機械によって検査された。
結果、明確に分かった事は肩から背中にかけての打撲だけだった。
記憶については、頭部に強い衝撃を受け、一時的に脳の伝達神経に異常を起こしているのではないだろうか…
という、曖昧な見解に終始した。
看護師に付き添われ病室に帰ると、枕元のテレビが乗っている台に携帯電話と財布が乗っていた。
「これが、あなたが持っていたものの全てよ」
付き添ってきた若い看護師が、手で示して教えてくれた。
当然記憶が無い私に、自分の物である事の確認など出来るはずもない。
パール色の携帯電話はかなりキズはあるものの、まだ使えそうな感じで…
茶色い高級ブランドの財布には、千円札が7枚入っていた。
しかし何度調べても、私の身元が分かる物などは一切入っていなかった…
「じゃあ何かあったら、そのボタンを押して呼んでね。
一応この部屋の担当は私…松山だから」
若い看護師はそう私に笑顔で言うと、慌ただしく病室を出て言った。
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