震える足を、暗闇に向けて踏み出す。
大丈夫。
2階から下りるだけ。非常階段から離れれば、あとは通用口まで全力で走れば良いだけだ。
そう自分に言い聞かせて、私は次々に階段を下りていった。
暗闇にも慣れてきて、次第に階段も周囲の状況も少しずつ見えてきた。
あと5段で、非常階段は終わる。
3段、2段、1段…
「ふう…」
何事もなく下りる事が出来て、私は大きく溜め息を吐いた。
しかし――
鈍い衝撃が背中に走り、私は前のめりに倒れ込んだ。
背骨の中心辺りに激痛がして、思考が混乱する。自分に何が起きているかすら、正確には把握出来ない。
ただ本能が、這ってでもこの場を離れる様に身体を動かす。
今度は頭に金属音が響き、一瞬力が抜けてコンクリートに顔から崩れ落ちた。
コンクリートに、赤い斑点がポツリポツリとついていく――
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