私は混乱する頭を落ち着けようと、震えながら無理矢理深呼吸をした。
落ち着いて、冷静に現状を把握しよう。
何度も深呼吸をするが、膝はガクガクと震えて止まらない。
どうにかするにしても、この非常口を叩いて叫べば夜勤の看護師が気付いてくれるかも知れないが、大騒ぎになるかも知れないし、この場所にいる時点で勝手に深夜に徘徊している様にしか思われない可能性が高い。
最悪の場合、また妙な幻覚を見たんだと言われ、精密検査なんて事も考えられる。
ここは2階だ。
このまま、この非常階段を下り、夜間の通用口からこっそり病棟に戻る方が良いだろう。
非常階段を下りようと下を見るが、まるで取り込まれそうな暗闇が広がっている。
しかも、誰もいないのに背後から突き飛ばされた事を思い出すと、足が踏み出せない。
それでも、ここを下りるしか方法がない。
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