この日――

私は前日看護師長に言われた様に、病棟から出る事をせず、大半をベッドの上で過ごした。

あのライターも2、3日かかると言っていたし、無理をしてロビーに下りる理由も無かった。


しかし、昼間からベッドに寝転んでいた為か、夜になっても一向に眠くならなかった。



消灯時間を過ぎて3時間。深夜0時になっても、私は眠る事が出来ず、布団を被って目を閉じていた。

目を閉じていると、なぜか嫌な事ばかりが脳裏を過る。


思い出すのは、あの夜の出来事だった。

落ち着いて考えると、あの時非常灯の下に何かがいた。幻覚かも知れないけど、やはり何かがいた。

もしかしたら…



その時だった――

布団を被っていた私の耳に、微かに病室の扉を叩く音が届いた。

気のせいかと思ったが、私は布団から頭を出した。


コン…コン…


気のせいではない。
こんな時間に、一体誰が扉を叩いているのだろう?


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