病室に帰ってからも、私は自分の事について考えていた。しかし、当然の様に何も思い出せない。何も分からない。
そうしているうちに、消灯時間がやってきた。
看護師長に貰った薬は、テレビ台に付いているテーブルの上に、お茶が入ったペットボトルと並べて置いていた。
よく考えてみると、一体何の薬なのか聞いていなかった。
「電気消すよ」
そこに松山さんが入ってきた。この時間にいるという事は、準夜勤か夜勤のどちらかだ。
私は松山さんに声を掛けた。
「松山さん、看護師長に貰ったんですけど、この薬は何ですか?」
松山さんはベッドの方に歩いて来ると、テーブルの上にある薬を見て直ぐに答えた。
「ああ、これね。
これは精神安定剤よ。よく手術の前日に眠れない人がいるから、気持ちを落ち着かせて熟睡出来る様に渡す事があるのよ」
精神安定剤か…
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