聞いてはみたものの、私の心臓は異常な速さで打ち始めた。
もしかしたら、私はとんでもない素性を持つ犯罪者かも知れない。
でも、それはらば私は警察病院に入院させられているに違いない。いや、単に警察が気付いていないだけなのかも知れない。
駄目だ。
マイナスばかり考えていては、実は失踪した有名人なのかも知れないし…
そうだ。ワザワザライターが追い掛けてきたという事は、私は何かしら有名な人物に違いない。
そんな揺れる心境を他所に、ライターは意外な事を口にした。
「いや、僕が知っているのは、君がここに運ばれてきた理由だけだ。
名前さえ分かれば、探す事自体は難しい事ではないけどね」
私はその答えに落胆し、思わず視線を床に落とした。
そんな私の姿を見て、ライターは笑顔で言った。
「何か私物はないの?
もしあるなら、それで君の事を調べてあげよう」
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