廊下の一番奥…
非常灯の下で、暗闇に紛れ何かが蠢いている。


その部分を凝視していると、目が慣れてきて何となく人影の様に見えてきた。

そして、一陣の風が頬をすり抜けたと思った時には、人影が見えなくなった。


風…
非常口が開いたの?


私は廊下に何も無い事を確認して病室から出ると、奥へと視線を送る。

廊下には誰もいない。
誰もいない?

私は不思議に思い、奥に向かって歩き始めた。



非常灯が明るくなり、廊下の奥まで見え始めたが、やはり人影どころか何も無い。

非常口のノブを回そうとするが、鍵がかかっていて動かない。錠は挿し込み式で、鍵が無ければ開けられない仕組みだ。


病室の前を通り過ぎた人は、一体どこに消えたのだろう…
いや、最初から来ていなかった?

あの時吹いた風は、一体どこから吹き込んだのだろう…


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