何も聞こえない…



扉に耳を当てていると、不意に壁つたいに鈍い衝撃音が響いた。

「な、何…?」

こんな深夜には通常有り得ない物音に、驚いて身を引いた。


それでも、気になって直ぐに扉に耳をつけて廊下の様子を伺った。

しかし、それ以降は何の音もしなかった。何の音もしないというのは、奥に向かった筈の人が戻って来る足音さえしないという事だ。


悪い想像ばかりが私の脳裏を過る。

まさか、幽霊狩りだと言っていた人が、逆に襲われたなんて事は…


自分の心拍音が、こめかみが痛い程に大きくなってきた。そして、有り得ないと思いつつも、廊下の様子が気になって仕方がなかった。

私は意を決して、扉のノブに手を掛け、ゆっくりと回した。


カチャリという小さな音が病室内に響く…

私は扉を開けて、廊下の奥をそっと覗いた。


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