私は長時間開いていなかった様子の乾いて張り付いた唇を、痛みに堪えて強引に引き剥がした。

その声は、酸素吸入器の青い透明なプラスチックのマスクも遮断し、明確に聞き取るには困難なほどだった…


「私は…
一体なぜここにいるんですか…?」

「え…?」


私に繋がる時折妙な電子音を鳴らす、白い多くの計器類を点検していた年配の看護師が振り返った。

そして点検を途中で一度中断し、怪訝そうな表情で私の枕元に近付いて来た。


その看護師の顔からは、今目覚めたばかりの私にですら懐疑心が見てとれる…

「……道に倒れているところを、救急車で運ばれたのよ」


道に倒れていた…
救急車で運ばれた?
私は自分に全く心当たりがない事を言われ、傍目からも分かるほど困惑した。

なぜ私がそんな事をしなければならないのか、全く思い当たる節がない。
というよりも…


看護師は仕事だからなのか、私を試しているのかは分からないが有り得ない質問をしてきた。

「あなたの名前は?」

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