翌日の午後――
散歩に出掛けようとエレベーターに向かっていると、ちょうど松山さんがエレベーターから降りてきた。
私は松山さんを見付け、急いで駆け寄った。
「おはようございます」
「おはようって、こんにちはでしょ」
「ははは、今出勤なのかと思って。
あ、ところで…
ちょっと小耳に挟んだんですけど、松山さん結婚されるそうですね。おめでとうございます」
私の言葉に、一瞬松山さんの表情が険しくなった。いや、私が思わず言葉に詰まってしまう程の、怒りに満ちた表情だった。
しかし、直ぐに穏やかな表情に戻り、いつもの様に柔らかい口調で言った。
「一応、まだ一部の人しか知らない事だから、内緒にしておいてね」
「は、はい…」
松山さんは笑顔で手を振り、ナースセンターに歩いて行った。
今松山さんが一瞬見せた表情は、一体何だったのだろう…
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