ミ ガ ワ リ


「あ、あの」

「どうしたの?」

頭を切り替えた私は、電灯を消そうとした看護師を呼び止めた。


「松山さんの左手の薬指に、豪華な指輪が見えたんですけど…
あれって、婚約指輪ですよね?」

「見た?」

「はい」

看護師は私のベッドに近付いて来ると、小声で教えてくれた。


「あのね…
松山さん、来月結婚して退職するのよ。

高校の時からの付き合いで、隣の市の職員らしいの。写メ見せてもらった事があるけど、結構かっこよかったよ。

あ、これ…まだ内緒だから、他の患者に言っちゃ駄目よ」

「え…は、はい」



看護師は消灯すると、長居をしてしまったからか足早に病室を出て行った。

私は暗くなった病室で、静かに目を閉じた…


そうか、やはり婚約指輪だったんだ。もし明日も出勤だったら、お祝いを言わないといけないな…

私はこの夜、意外にも早く眠る事が出来た。


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