それから5分も経たないうちに、看護師長が病室から出てきた。
そして私の方に歩きながら、首を横に振った。
「病室のどこにも、血溜まりなんて無いようだけど?」
「え…そ、そんな筈ありません!!
私は確かに――…」
私は看護師長の横をすり抜けると、自分の病室に駆け込んだ。
そんな…
そんな事は有り得ない。確かに私は、この目で確認した。
ここで!!
愕然として、私はその場に膝をついた。
それは、信じられない光景だった。そこには、あった筈の血溜まりどころか、一滴の血さえも落ちていなかったのだ。
「無い?
そ、そんな……」
その時、背後から優しく肩を叩かれた。
「落ち着いて。ゆっくり深呼吸をして…
前にも言ったけど、頭を強く打っているから幻覚を見る事があるのよ。
でも大丈夫。先生も、徐々に善くなると言っていたし」
幻覚…だったの?
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