私の左手は無意識のうちに、枕元に有るはずの何かを探す…
すぐに近くの扉が開く音がして、数人の足音が濁流の様に室内に押し寄せて来た。
「どうしました?」
耳元でかすれた女性の声がして、私は本格的に覚醒した。
しかし、その瞬間激しい頭痛と嘔吐…
それに、異常なまでの心拍数の上昇を自覚した。
「き…気持ち悪い…
手が…手が冷たい…」
「一体誰がこんな事をしたの!?」
先ほどの女性が他の誰かに怒鳴る声がしたかと思うと、半分感覚の無くなった右手を掴み手の甲に深々と差し込まれた管を抜いた。
「うっ…」
管を抜かれる瞬間、水膨れした右手にも身体の一部を剥される様な違和感を感じた。
そして冷えきった右手に毛布が掛けられ、今度は自由だった左手に針を刺された…
「ごめんなさい。
誰かが点滴の量と速さを間違えていたみたいで…
今度は大丈夫だから」
どうやら、通常では有り得ないスピードで身体に流し込まれた液体が、血管の許容量を超えて体内外に溢れ出たらしかった。
そんな事よりも…
ここは一体どこなの?
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