記憶を失って良かった?


あ――!!


慌てて振り向いたが、あの記者の姿は既にどこにもなかった 。


そうだ。どう考えても、あの記者は知っている…
私がどこの誰か、一体なぜ私が記憶を失っているのかも!!


私は自分の記憶を取り戻す糸口を、やっと見付けた。しかし同時に、1つの疑問が浮かび上がってきた。

雑誌の記者がなぜ私を追い掛けるのかという事だ。


私は一筋の希望の光と共に、一抹の不安を抱えてその場を離れた。



受付ロビーに着き、ベンチを1つずつ確認して行くと、一番外側に高宮さんが座っていた。

私は彼の背後に近寄ると声を掛けた。


「こんにちは。
また今日も、隅の方に座っているんですね」

「やあ。僕は明るい所が好きじゃないし、こういう場所の方が合ってるから」

「そうですか。
でも、私もそうかも知れないな」


私は高宮さんの隣に座ると、それから1時間程話し込んだ。


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