エレベーターで下り、人通りの少ない廊下を受付のあるロビーへと歩いた。
そして丁度ロビーに入った所で、急に右手を掴まれた――
「きゃあ―――!!」
突然の事に心臓が止まる程驚き、反射的に悲鳴を上げた。
直ぐに自分の手を掴んだ手を振り払い、その相手を見ると、あのスーツ姿の男性が立っていた。
「チッ…
そんなに叫ばれちゃ、直ぐに人がくるな。
あのね、俺はそんなに怪しい者ではないんだ。雑誌の取材記者なんだよ」
雑誌の取材記者?
何故そんな人が、私の事を調べたりしているのだろう…
「そこの人!!
何をしてるの!!」
ロビーの反対側の廊下から、年配の看護師が私達の方を指差して走り始めた。
「くそ…
じゃあ、また来るからさ。
それにしても、記憶を失って良かったね。
じゃあまた」
そう言うと、スーツ姿の男性は出口の方へと走り去った…
.



