私は扉と反対方向を向き、身動きひとつせず静かな寝息を立てた。
今廊下でしていた話を万一私が聞いていたら困ると思い様子を見に来たのだろうが、私の芝居にまんまと騙され看護師はそのまま病室から出て行った――
でも…
私がそんなに邪魔な存在だなんて、全く気付いていなかった。
でも、転院するにも、自分がどこに住んでいたかも分からないし、どうする事も出来ない…
私は自分の事や今後の事を考えているうちに、いつの間にか寝てしまっていた。
翌日――
私の心は晴れなかった。
午前中の回診で笑顔を見せる清水先生を目にすると、深夜の会話が蘇り、目を合わせる気にもならなかった。
「そうだ――」
私は昨日出会った、高宮という大学生の事を思い出した。
彼ならば利害関係も全く関係ないし、雑談でもすれば少しは気分転換になるかも知れない。
私は昼食を済ませ、外来患者がいなくなる頃を見計らって受付に向かった…
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