洗面所で立ち聞きしている私でさえ、非常口が開いたという話は信じ難い…
「非常口が開いただけじゃないんだ!!
その後、ヒタヒタと廊下に微かな足音がして、誰がが俺のびょうしつを覗いて言ったんだ。
"ここじゃない"
って…」
「お前なあ…
嘘吐くなら、そんな古典的なヤツじゃなくて、もっと怖い話にしてくれよ 」
「だからマジだって!!」
確かに、信じろと言われても、信憑性のある話ではない。
ガタガタ…
談話室で椅子を片付ける音がして、扉の開く音がした。
私は慌てて洗面台の方を向き、蛇口を捻った。
洗面所には扉が付いていない為、廊下を通ると私が何をしているのか、丸見えだった。
しかし、彼等は私に全く気付く事もなく、自分達ね病室に戻って行った。
何の為に入院しているのかは分からないが、あの様子だと退院間近だろう…
私は気付かれない様に少しだけ顔を出し、廊下を奥へと歩いて行く彼等後ろ姿を見た。
そして、それぞれが、一番奥と奥から2番目の4人部屋に入って行く姿を確認した。
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