ミ ガ ワ リ


私は病棟に戻ると、病室に入る前に手を洗おうと、洗面所に向かった。


洗面所に行き水道の蛇口に手を掛けた時、背後の壁伝いに振こもった様な声が聞こえてきた。

壁の向こう側は談話室だ。普段は誰が何の話をしていようが気にならないが、突然大声がした為、壁に近寄った…


「マジで!!
そんな事ある訳ねえじゃん。馬鹿馬鹿しい」

「いやマジだって!!」


どうやら若い2人の男性が、話し込んでいるみたいだった。

一体男性2人が、何の話で熱くなっているのだろう?


「幽霊なんか、いる訳ねえじゃん。
お前、俺を怖がらせようとしても無駄だぞ」

「マジで、嘘や冗談なんかじゃないんだって。

0時の、看護師がする見回りがあるだろ?
あれから30分位して、非常口が軋みながら開いて…」

「非常口って、鍵かかってるじゃん」


この病棟は、この洗面所の奥に20室あり、一番奥が非常口になっている。

非常口は内側から鍵がかけられていて、その鍵はナースセンターに保管されている。


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