グレーのパーカーに、同じグレーのスウェットのズボン…
見舞い客という雰囲気ではない所を見ると、入院患者だろうか?
初めて会う筈なのに、何故か懐かしい感じがして、つい近付いてしまった。
「こんにちは。
入院してるんですか?」
突然その人が、私に話し掛けてきた。
「あ、はい。
貴方もなんですか?」
その人は一瞬戸惑った表情をしたが、少し哀しそう目をして言った。
「そうです」
その時、その人の背後を病棟の看護師長が通り掛かり、立ち止まると私の方に向いた。
「余り出歩かないで、病棟内にいるのよ」
「は、はい」
相変わらず、厳しい口調だ。一応入院患者なんだから、もっと優しく言ってくれても良いのに…
あ、そういえば――
昨日はあんなに怒ったのに今日は特に何も言わないという事は、この人は本当に入院患者なんだ。
誰かは当然分からないが、看護師長の合格サインが出た様で、安心して話が出来る。
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