傷が無い…
では、あの血は一体どうして?
その時、背後から…
正確には、入口付近に人の気配を感じ思わず振り返った。
しかし、その方向には洗面所の蛍光灯に照らされる廊下が見えるだけで、誰もいなかった。
いやしかし、今の感覚は間違いなく誰かがいたはずだ。
私は顔に着いていた血の事もあり、タオルで顔を拭う事も忘れ入口から廊下に顔を出した。
長い廊下を右、左と見渡すが人影は無かった…
変だ。
何かがおかしい。
一体何がどうなっているのか分からないが、猛烈な違和感を覚えた。
顔に着いていた血は、私が気付いていない場所に傷があるだけかも知れない。
だけど、この胸騒ぎは何だろう…
そういえば、私がこの病院に搬送された経緯も、詳しくは説明を受けていない。
私は手にしていたタオルで顔を拭うと、自分の病室へと戻り始めた…
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