ミ ガ ワ リ


この病棟が脳外科だからなのか…
足を踏み出して左右を確認しても、まだ灯が点いていない薄暗い廊下に人影は無かった。



私は病室の左斜め前にある、病棟の洗面台に向かってゆっくりと歩き出した。

そして10歩も進まないうちに、扉の着いていない入口から洗面台のある場所まで辿り着いた。


病棟の洗面台はお世辞にも綺麗な物ではなく、まるで小学校の水飲み場と同じ様に幾つもの蛇口が並んでいるだけだ。



私は一番入口寄りの蛇口を捻ると水を出し、手をゴシゴシと洗った。

流れ出る水に手を浸しながら、ふと正面の壁に貼り付けられた鏡を覗き込んだ…



その瞬間、言葉を発する事も出来ないまま私の手が止まった。

額の中心辺りに、この手と同じ様な赤黒い何かが付着していたのだ!!


「こ…この色と、この凝固している感じは……血? 」


私はまだ完全には目覚めていない状態だったが、それでも必死で顔を何度も洗った。

状況を考えると、自分の額に何かによって傷ができているとしか思えなかった!!


私は5回以上念入りに額を水で洗い流すと、もう一度鏡に写る自分を確認した。


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