男が耳元で囁いた。
「俺は無益な殺しはしたくないんだが、この世界は必ず代償が必要なんだよ。
悪いな…」
後頭部に一撃。
更にもう一撃。
最初の一撃は殴られた感覚があったものの、その後の2回は既に感覚が無くなっていた。
死を受け入れるしかない。
諦めて抵抗を止めた。
考えてみれば、私は自分の都合で5人も殺してしまったんだ。死んで当然だ。
そもそも、それを後悔してビルから飛び下りたんだ。
その瞬間、頭の中が真っ白になり、過去の映像が次々と蘇ってきた。
過去と現在…
その全てを、心から認めて受け入れる事で、私の記憶は急速に回復し始めた。
そうか――
私の記憶が失くなったのはビルから落下した時に受けた衝撃が原因ではなく、心に受けた傷…精神的なダメージが原因だったんだ!!
私は全てを思い出した。
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