翌朝、私は慣れない病院生活の為か、6時30分にある検温前に目が覚めた。
ゆっくりと目を開けると、病室に掛けられた時計がぼんやりと見えた。
6時か…
乱れた髪を掻き上げようとした時、自分の右手が視界に入り思わず手が止まった。
「な、何これ…」
手の平が、赤黒い何かで汚れていたのだ。
しかし私には、こんなに手を汚す行動をした記憶が全く無かった。
いや、あるとすれば深夜に目が覚めた時――
私はハッとして起き上がると、慌てて自分の枕を振り返った。
何も変わった様子はない…
思い過ごしかと胸を撫で下ろしたが、この不気味な手を洗わないと落ち着かない。
私は看護師に貰った白いタオルを、テレビ台の下にある物入れから取り出した。
「よっと…」
身体をクルリと回し、ベッドから降りると病室を出た。
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