落ち着いてきたとはいえ、当然普段通りの判断が出来る訳ではない。
「西村さんはこんな所で、こんな時間まで何をしていたんですか?」
大学に向かう途中、赤信号に止まった時に何気なく尋ねた。
「ん――…、前にも言ったと思うけど、ちょっと調べ物をね」
そう言って、私の方を見て含み笑いをした。
まさか…
既に、かなり分かっているという事?
これ迄の事を考えると、どう見ても私が4人を交通事故に見せかけて殺害したとしか思えない。
動機も、映画のオーディション絡みだとすれば明白だ。
記憶が無い私には事実は分からないが、状況証拠は全て揃っている。
マズイ…
仮に、あの男から逃げられたとしても、このライターが事件を究明すれば私は破滅だ。
いや、理由はどうあれ、4人も殺害したのであれば裁かれるのは当然でもある…
誰に?
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