大事な物と適当な着替えを用意し、ボストンバックに入れようとした時、ある事に気付いた。
ボストンバックに、何かが入っていたのである。
「うわあぁ――!!」
思わず悲鳴を上げ、後退りした私は、背後のベッドに後頭部を打ち付けた。
「ま、まさか…」
そのボストンバックの中には、前部分に黒い染みがベットリと付いたシャツとズボンが、隠す様にして入っていたのだ。
やはり私が…
その時――
窓ガラスから、昨日と同じ様に虫がぶつかる様な音がした。
来た――!!
そう判断した私は、そのまま何も持たずに外に飛び出した。
とにかく、逃げて逃げて、それから後の事は考えよう。
廊下を走り抜けると、一気に階段を駆け下り裏側の踊り場から、塀とマンションの間に飛び下りた。
大丈夫、必ず逃げてみせる。
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