私は嗚咽と共に、その場で激しく嘔吐した。
声など出せる筈もない。静まり返る室内には、私が啜り泣く声だけが響く…
私に40万円なんて金額を、揃えられる筈がない。
だから私は…
この犬の様に、首を切り落とされ、額に名前を書いた紙を貼られるんだ。
"麻弥"、と――
しかし、余りの絶望感が、逆に冷静さを取り戻すきっかけとなった。
ここで泣いていても、何の解決にもならない。今のうちに、ここから逃げないと。
時刻はまだ21時にもなってないから、人通りは多い筈だ。
それに、宅配便が今届いたという事は、まだこの近くにはいないのではないだろうか?
逃げよう。
今のうちに、どこか遠くに!!
私は急いでビニール袋を元通りに閉め直すと、ガムテープで何重にも絞めた後、更にゴミ袋で二重に包んだ。
そして、その周辺をタオルで綺麗に整えると、タンスの奥からボストンバックを取り出した。
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