ミ ガ ワ リ


携帯電話は電源が切れていて、画面は真っ黒だった。

電池が切れているのかと思ったが、電源のボタンを押してみた…


2秒ほど押していると効果音と共に、画面がパッと明るくなった。


「何だ…
電池あるじゃん」


思わず言葉が口から漏れたが、画面上に現れた暗証番号を入力する為の4個の四角い枠に、指が止まった。

暗証番号…
記憶の無い私に暗証番号など分かるはずもなく、大きく溜め息を吐いて再び電源を切った。


少しは何か自分の事が分かるかと思ったが、自分の事が分からなければ、携帯電話を開く事すら出来ないとは…


私は仕方なく、携帯電話をテレビ台に付いている引き出しの中に入れた。

とりあえず、私にとって大事な物には違いない。




カチャン


100円玉を入れると料金ボックスのランプが赤く点灯し、今まで映らなかったテレビの電源が入った。

不思議な感覚だ。
日常の動作や一般的な知識は残っているのに、テレビに出ている人は誰だか記憶にない…


一体、私の記憶はいつになったら戻るのだろう?
清水先生が、一時的な症状と言ってはいたが…


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