「何がですか?」
「君の友達の女の子…何て名前だったかな?
そうそう、井上 由衣って子、映画の出演が決まって毎日スタジオに通っているよ」
え――?
映画に出演が決まった?
毎日スタジオに通っているって、バイトではないの?
その時、暗殺者の話を聞いていた私の脳裏に、部室での風景が蘇ってきた。
高宮さんが皆に説明している様子。「このメンバーから1人だけ、映画に出演出来る様になったから」
喜ぶメンバー達の姿…
「…――したんだい?気分でも悪いのか」
「あ、いえ…
少し頭痛がして」
少しだけ思い出した。
「そう…なら、早く帰った方が良いよ。
じゃあね」
ライターは軽く右手を振り、私が来た道を真っ直ぐに歩いて行った。
あの方向には、文化系サークルの建物しかない。
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