これで良い…
これで何も起こらなければ、それが一番だ。


私は藤田に会うと、そのまま帰宅する事にした。

当然、まだ相手が藤田だと決まった訳では無いし、外にいる事は危険だと判断したのだ。


しかし、そんな私の思いとは裏腹に、校門に向かう途中でライターに呼び止められた。

「やあ、もう帰るのかい?」

「あ、はい…」

そうだ。
この人は、この大学で起きた事件を調べているんだ。

私の事を調べていて何かを見付けたなら、当然あの交通事故の事だろう…


「し、調べ物は分かりましたか?」

それとなく聞き出そうと、目一杯の笑顔を作って尋ねた。

「うーん…まだ。
何となくは分かってきたけど、証拠がね。

ああ、そう言えば、この前君が持っていた台本…」

「暗殺者ですか?」

「そうそれ。あの映画の監督は、この大学のOBらしいね。
だからかなあ…」


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