「いや、入院してて…」
「本当!?
知らなかったよ。言ってくれれば、見舞いに行ったのに。
じゃあ、あれだけ燃えてたオーディションも受けれなかったの?」
「オーディション?」
その時、誰かの名前を呼ぶ声がした。
「あ、行かなきゃ。
じゃあまたね麻弥!!」
彼女はそう言うと、私が向かう方向とは逆に走り去った。私は名前すら聞けず、呆然とその姿を見送ってしまった。
オーディション?
その時、脳裏にあの"暗殺者"の台本が浮かんだ。
もしかすると、私が受けようとしていたオーディションとは、あの映画"暗殺者"のキャストなのかも知れない。
午前中の講義が終わり、私は由衣と学食に行った。相変わらず声を掛けられるが、誰だかは分からなかった。
B定食を買い席に着くと、由衣が手を合わせて頼み込んできた。
「ねえ麻弥。今日、午後からバイトなんだけど、代わりに出席カード出しておいてくれないかな?」
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