ハンカチで目頭を押さえていた高宮さんの母親は、俯いたままで驚く事を言った。
「貴女と淳也は、婚約していたのよ」
え――!?
「とは言っても、2人が勝手に決めていた事で、貴女の御両親にはまだ話していない様だったけど…
うちは、ずっと母1人子1人だったから、娘が増えたみたいで本当に嬉しかった。
思い出せないかも知れないけど、よくこの家に遊びに来ていたのよ」
そう言われてみれば、初めて会った様な緊張感も無いし、この家にも愛着の様なものまで感じる。
本当の自分はこの場で泣き崩れるのだろうが、今の私にはそれが出来ない。出来ない事が悔しい…
「あ、あの…
どうして亡くなったんですか?」
辛い事を聞く様だが、どうしても理由を確認しておきたかった。
高宮さんの母親は、再びハンカチで目頭を押さえると、途切れ途切れに話し始めた。
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