私は迎えに来てくれた高宮さんの母親の車に乗ると、駅から15分程離れた場所にある自宅に連れて行ってもらった。
高宮さんの自宅はバブル時代に開発された住宅団地で、50坪程の敷地のオレンジ色の屋根が目立つ2階建住宅だった。
今では狭い印象だが、当時としては今より随分と条件が良い物件だったのだろう。
中に通された私は、玄関から直ぐ右にある仏間に入った。
線香の煙と香りが漂う部屋は、高宮さんが亡くなって以来、祈りを欠かしていない事を物語っていた。
仏壇に向かい黒い額に飾られた写真を見ると、病院で出会った高宮さんに間違いなかった。
私が参る姿を見て、背後で高宮さんの母親が鼻をすすり始めた。きっと泣いているのだろう…
仏壇に参った後、私は座ったまま向き直ると、意を決して高宮さんの母親に尋ねた。
「私と高宮さんは、一体どんな関係だったのでしょうか?
記憶を失くしているので、どうしても思い出せません…」
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