「それで、麻弥はどこに行くの?
記憶が無いんだから、余り遠くに行ったら駄目よ。最悪は迎えに行ってあげるけど…」
「うん。高宮さんの自宅に行くの」
その言葉と同時に、由衣の表情が一気に強張った。
そうだ。由衣は高宮さんが亡くなった事を知っていた筈なのに、なぜ私に黙っていたのだろう?
「そう、高宮さんの…
なぜ知ったの?」
「今日、午前中に大学に行って来たんだ」
由衣の表情が、益々険しくなった。特に気に障る事を言ったつもりは無い私は、一瞬戸惑った。
「そ…そうなんだ。
余り1人で大学に行ったら駄目よ。それに――…」
「それに?」
一緒に歩いていた私達は、その時ちょうど駅に着いた。
「あ、ごめん。電車が来るから、私は先に行くね」
駅の時計を見た由衣は、私を残してホームに駆け込んで行った。
由衣のバイト先は、私とは逆方向の様だった。
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